2018年11月30日(金)~12月11日(火)
月ー金 12:00ー19:00 土日祝 休廊
tagboat Galleryでは、ホリグチシンゴによる個展 “Drone’s eye (half a person)” を開催致します。
ホリグチシンゴは多摩美術大学の修士課程日本画研究領域を修了したばかりの期待の新人作家です。
タグボートが8月に開催したアートフェス「Independent Tokyo 2018」にてタグボート特別賞を受賞しました。
抽象的でありつつも温かみのある絵画は、ある特殊なプロセスを経て制作されています。
彼の作品は、まず厚紙で作成したオブジェやドローイングを組み合わせてインスタレーションを作り、撮影したものを一旦パソコンに取り込みます。
そして物体のアウトラインや模様を抽出して下絵とし、日本画に用いる画材で着彩していきます。
ホリグチシンゴが自身に課しているこのプロセスは、彼が手で線や色を加えることによって画面に手触りを与え、目で見たときや写真で撮影したときとは異なる要素を生み出します。
立体をカメラで撮影して抜き取った無機質なデータから、彼自身も予測できない作品を作り上げているのです。
ドローンから俯瞰したような風景に人の手を加えた、シンプルながらも多層的な作品は、見る者を惹きつけてやみません。
ぜひご高覧ください。
展示作品
略歴
1993 京都府生まれ
2016 多摩美術大学 絵画学科 日本画専攻 卒業
2018 多摩美術大学 修士課程日本画研究領域修了
個展
2017 The Field and Daylight ガレリア青猫 / 西荻窪
The Field and Daylight montanO-librO / 船橋
2018 The Field and Daylight2.0 アートスペース羅針盤 / 京橋
グループ展
2018 第13回大黒屋現代美術公募展 板室温泉大黒屋 入選 2017 アートは福笑い ガレリア青猫 / 西荻窪第
4回未来展 日動画廊 / 銀座
多摩美術大学院日本画研究領域二年次展 佐藤美術館 / 千駄ヶ谷
2016 多摩美術大学絵画学科日本画専攻卒業制作有志展 PORTAL ストライプハウスギャラリー / 六本木
ギャラリーへ行こう2016 数寄和 / 西荻窪 数寄和大津 / 滋賀 入選
CROSS REVIEW アートスペース羅針盤 / 京橋
2015 八王子ビッグウェスト2015 東急スクエア / 八王子
2014 八王子市夢ビエンナーレ 八王子市夢美術館 / 八王子
その他
2016 神山財団芸術支援プログラム 第3期
2014 八王子市夢ビエンナーレ奨励賞
CONCEPT
僕が現在作っている作品たちは実はどれも少し特殊なプロセスを経て制作されています。まず厚紙で作った小さなオブジェや仕事の合間に描いているドローイングを組み合わせてジオラマのようなインスタレーション(=状況)を作ります。次にそれをカメラで撮影し、写真のデータをPhotoshopに取り込んだら、オブジェのアウトラインや表面上の模様の要素を抽出し、それをプリンターで印刷します。これがそのまま僕の作品の下絵になります。キャンバスや切り出した木材にその下絵を転写したら、岩絵の具を含む顔料や、箔など主に日本画で使われている素材を膠で画面に定着させ、平面作品としての完成を目指していきます。一度立体を組み合わせて現実空間に作り上げたインスタレーションを写真で撮影することで、空間は質量のない無機的な情報に変換され、それをもう一度画材という物質を通して現実空間にリアライズしていく過程で元のデータにはなかった色彩や質感が加わっていき、ある瞬間にそれは僕にとっての“作品”へと変化するのです。
こんな周りくどいプロセスを、撮影した写真をそのまま転写するというルールを自分に課す必要があるのか不思議に思う人もいるかと思うけれど、今、僕が自身に課し、実行しているこの制作の方法は自分にちょうどフィットしているように感じていて、とても自然なモチベーションで作品を作れているように感じています。厚紙のオブジェやドローイングは一度作ってしまえば、組み合わせを変えて別のパターンの作品を作ることが出来るし、それらの素材が増えていくと徐々に自分でも想像していなかったような組み合わせから新たなイメージが生まれてきます。それはどういうことかと言うと僕が言葉でコンセプトや意味を考えるよりも先に、作品のイメージがどこからともなく勝手に作り出されていくということです。
撮影した写真をそのまま転写するというルールは、作品を作る上での自由を束縛しているのではないかと思っていた時期もあるけれど、今は寧ろその制約があるからこそ作り出すことが出来るイメージがあるはずだと思っています。普通の絵画の制作方法では、どれだけ絵が上手い人が描いたとしてもアクセスすることが出来ないイメージの領域が世界には存在しているとして、このように制作プロセスを階層状に複雑化することで、そのイメージの領域へとアクセスすることが可能になるんじゃないかと予感しているのです。