2022年3月22日(火) ~ 4月11日(月)
営業時間:11:00-20:00
*最終日は17時close、他,館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
銀座、阪急MEN’S TOKYO 7F、タグボートのギャラリースペースにて、アーティスト北村環と三塚新司による二人展「MOSAIC.」を開催致します。
北村環の作品は、描く対象をデジタルで色分解し、色の網点を手描きすることで不揃いな色の集合体がぼやけた幻影のように見える仕掛けを絵に施しています。
これらの表現はメディアから流れてくる情報のみで先入観を持つ「人間の本能」への問いかけとなっており、鑑賞者へ「見ること」とは何かと語りかけます。
一方、三塚新司は作品は現実に存在している名画や写真の解像度を下げ、実態にモザイクをかけたような表現を行います。
薄れゆく記憶。消されゆく記録。その時代の望む情報だけがアーカイブされていると考える三塚。
かつての画家達が様々な背景によって点描による技法を発達させてきた美術史に対し、現代もまた「一目では伝わらない絵画」が供給されるべきではないか、との問いを持って制作を行います。
また、2022年岡本太郎現代美術賞では岡本敏子賞を獲得致しました。
作品の表層から共通点を見受けられる二人の作品は、作品が持つ「社会性」といった点でも共通しているのではないでしょうか。
本展では、新作を展示・販売致します。現代を生きる彼らの現代へ対する答えをご高覧ください。
EC販売
※EC販売は3/22(火)13時からを予定しております。ご購入希望の方は、上記各作家ページからご購入くださいませ。
※店頭販売を優先しておりますので、ご希望の作品がECにてご購入頂けない場合もございます。予めご了承くださいませ。
ウッドパネルにスポイトを用いてアクリルで着色
「ひまわり」 北村環
2022 H72.8×W51.5cm
ウッドパネルにスポイトを用いてアクリルで着色
「the twenty five Mona Lisa -1」 三塚新司
2022 100cm×70cm
フォトアクリルプリント
「311 漂白-Ⅳ」 三塚新司
2021 70cm×210cm
フォトアクリルプリント
CONCEPT
19世紀後半に現れた印象派と呼ばれる画家達は、淡い光や霧に霞む風景を描いた。それは写術主義がおこなってきた細密で明晰な絵画とは違い、荒々しい筆さばきや点描などを使った淡くぼやけた識別困難な絵画であった。そのような印象派の作品を見る際は、目を凝らすのではなく、逆に目を細め、自らの持つ記憶の中の光や風景と、目の前のぼやけた絵画の印象とを接合させる必要があった。
そうする事で、初めてそれが特定のモチーフや景色であると認識する事が可能になり、そしてその認識の瞬間に、記憶の中の光や風景を見た際の情動が目の前の絵画からも湧き上がるように浮かび上がってくる、という構成を持っていた。
印象派の登場は芸術の世界を、それまでの写術主義が積み上げてきた権威と規律、肖像画と宗教画の世界から、作家個々の感性と解釈を、鑑賞者の感性と結びつける運動へと変化させた。
今回、北村環と三塚新司の二人展「MOSAIC.」を開催するにあたり、作品の表層だけで無く、その技法へ至る意図に関しても、二人に共通する点は無いか話合った。二人はそれぞれ、時代との合致、あるいは作品を他の何かと接続させる為に、それが必要だと感じて、モチーフの「解像度を落としてゆく」技法を選んでいた。思い返せば、印象派は産業革命による急激な社会の構造変化の中に現れた。所得の増加は出資者である資本家と、アイデアの出し手である起業家に集中し、一般労働者との貧富の格差は限界まで拡大していた。
一般労働者の所得が増加する事でその縮小が始まるのは、最も早い英国でさえ70年の時間が必要だった。そして奇しくも、北村と三塚が「解像度を落としてゆく」必要に駆られた現代も、デジタルイノベーション、あるいはグローバリズムによる急激な社会の構造変化の中にある。
かつて印象派の作品を見た人々が、目の前の作品と自らの記憶の中の光や風景とを接合したのと同じように、本展示における二人の作品も、鑑賞者それぞれの持つ、現代という時代へ対する理解と作品の接合を迫るものである。何故「解像度を落としてゆく」必要があったのか、その認識を通じて、今現在という時代に対する二人それぞれの解釈を感じて貰えればと思う。
PROFILE
北村 環 / Tamaki Kitamura
1972 石川県生まれ
1995 東京パース造形学院卒業
2000 山城デザインスタジオ退社
2005 イラストレーターをやめ、画家として活動開始
【受賞歴】
2020 「Independent Tokyo 2020」審査員特別賞受賞
2021 「The16th TAGBOAT AWARD」入選
私は「ギミック」をテーマに作品を制作しています。
私の作品はよく「写真で見ると描かれている対象がはっきりと見えるが、肉眼で見るとぼやけた抽象的な絵に見える」と言われます。これは偶然ではなく、描く対象をデジタルで色分解し色のドットを手描きする事で、不揃いな色の集合体がぼやけた幻影のように見える仕掛けを絵に施しているからです。
はたして人は肉眼で何が見えているのだろうか?これは事実にかかわらずメディアから流れてくる情報だけで先入観を持ちやすい人間の本能に警鐘を鳴らしています。
私は作品と向き合うことで、「見る」または「見える」ことが存在の確認になり得るのかを皆さんに問いたいのです。
三塚 新司 / Shinji Mitsuzuka
1974 長野県生まれ
2005 東京藝術大学卒業
【受賞歴】
2018年 池袋アートギャザリング IAG AWARDS 2018 準IAG賞受賞
2018年 Independent Tokyo 2018 入賞 審査員特別賞受賞
2019年 スパイラル SICF20
2020年 公募展 UNKNOWN ASIA 2020 審査員賞受賞
2021年 神奈川県美術展 県議会議長賞受賞
2021年 スパイラル SICF22
2022年 岡本太郎現代芸術賞展 岡本敏子賞受賞
高校卒業後、スキーパトロール、ライフガード、ソープランドの清掃、自転車便メッセンジャーなどの職を経て、1999年に東京藝術大学へ油絵科受験にて入学。入学後に先端芸術表現科へ一期生として転入し、在学中よりNHKの子供番組の放送作家として映像関係の仕事に携わる。同大大学院、メディア映像学部を中退。
その後、雑誌編集者、テレビ局ディレクターを経て、2018年より作品発表、公募展への出展を始める。
作品は現在、疑問の社会的受容に対する「疑い」を元に制作されている。